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  • No : 1863
  • 公開日時 : 2019/09/30 12:05
  • 更新日時 : 2019/12/11 15:21
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エルスバーグの逆説

エルスバーグの逆説
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エルスバーグの逆説(Ellsberg Paradox)とは、不確実性下の意思決定における逆説であり、期待効用理論における独立性の公理に対する反例の1つである。
 
エルスバーグの逆説では、赤色の玉が30個、黒色と青色の玉が合わせて60個入った1つの壺から、1つの玉を取り出す状況を考える。その上で、次のようなくじの選択問題を考える。
 
くじA: 赤色の玉を取り出すと1,000円もらえ、黒色か青色の玉を取り出すと何ももらえない。
くじB: 黒色の玉を取り出すと1,000円もらえ、赤色か青色の玉を取り出すと何ももらえない。
 
また、次のようなくじの選択問題も考える。
 
くじC: 赤色か青色の玉を取り出すと1,000円もらえ、黒色の玉を取り出すと何ももらえない。
くじD: 黒色か青色の玉を取り出すと1,000円もらえ、赤色の玉を取り出すと何ももらえない。
 
多くの人々は、1つ目の問題ではくじAを選択し、2つ目の問題ではくじDを選択する。しかし、このような意思決定は、期待効用理論における独立性の公理に反している。その理由は以下のように示される。まず、赤色の玉を取り出す確率は1/3であり、黒色か青色の玉を取り出す確率は2/3である。また、壺から玉を取り出す個人は、壺の中に黒色の玉が入っている確率をpであると考えているとする。このとき、それぞれのくじについて、下記図のような分解が可能である。
 
【図】
エルスバーグの逆説の図
1つ目の問題において、青色の玉を取り出して何ももらえない部分は両者のくじに共通しているため、独立性の公理によれば、この部分は選好関係に影響を及ぼさない。一方で、2つ目の問題において、青色の玉を取り出して1,000円もらえる部分は両者のくじに共通しているため、独立性の公理によれば、この部分も選好関係に影響を及ぼさない。選好関係に影響を及ぼす残りの部分を見ると、1つ目の問題と2つ目の問題が本質的に同じ意思決定問題であることがわかる。したがって、もし独立性の公理が満たされているのであれば、1つ目の問題でくじAを選択する人々は、2つ目の問題でくじCを選択するはずである。しかし、多くの人々は2つ目の問題ではくじDを選択する。このような現象をエルスバーグの逆説と呼ぶ。
 
人々がエルスバーグの逆説に見られるような意思決定を行う背景には、結果の実現確率が曖昧な選択肢を避けるという曖昧性回避が存在すると考えられている。
 
 
 

 
(参考文献)
Ellsberg, D. (1961). Risk, ambiguity, and the Savage axioms. The quarterly journal of economics, 643-669.
 

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