• 文字サイズ変更
  • S
  • M
  • L
  • No : 2098
  • 公開日時 : 2019/12/25 09:46
  • 更新日時 : 2020/02/18 18:44
  • 印刷

市場の流動性

市場の流動性
カテゴリー : 

回答

市場の流動性とは、市場での証券取引のしやすさを表す概念である。具体的には、市場において証券をいつでも、価格への大きな影響なく、大量に取引できる場合、「市場の流動性が高い」という。

一般的に、市場で大量の証券を売買すると、当初想定していた価格や数量で取引ができなくなることがある。市場における証券の取引量が少ない場合や取引相手が十分に存在しない場合には、円滑な取引が実行できない可能性もある。このような状態を、「市場の流動性が低い」という。
 
 
さらに詳しく

 
 
【ポイント】
 

  • 市場の流動性の多面性
市場の流動性という概念には、いくつかの異なる側面が存在する。Kyle (1985)によれば以下のような流動性の側面を示している。

第1の側面は、「即時性(Immediacy)」である。これは、市場での取引がいかに素早く、円滑に行えるかを表す概念である。円滑な取引が可能な市場ほど、流動性が高いといえる。

第2の側面は、「タイトネス(Tightness)」である。これは、市場でいかに取引費用をかけずに売買が実行できるかを表す概念であり、売値と買値の差でその大きさが測定されることが多い。売値と買値の差はビッド・アスク・スプレッドと呼ばれ、この差が小さいほど、取引費用が小さいといえる。取引費用が小さい市場ほど、流動性が高いといえる。
 
第3の側面は、「デプス(Depth)」である。これは、市場価格に影響を与えることなく、一度にどの程度の量の取引を行えるかを表す概念である。大量の証券が取引できる市場ほど、流動性が高いといえる。
 
第4の側面は、「レジリエンシー(Rresiliency)」である。これは、取引によって一時的に変動した価格が、いかに素早く正常価格へ戻るかを表す概念である。正常価格への回復のスピードが早い市場ほど、流動性が高いといえる。
 
このように、市場の流動性は様々な側面から捉えられるため、市場の流動性が高いかどうかについては、流動性のどの側面に着目するかによって、様々な判断がなされうる。

  • 市場の流動性と情報効率性
情報効率的な市場とは、証券のファンダメンタルズに関する情報が十分に価格に反映されるような市場を指す。Grossman and Stiglitz(1980)によると、このような市場では取引によって市場価格が大きく変動することが考えられ、「デプス」の観点から、市場の流動性が低くなる可能性がある。
 
その理由については、次のように説明される。ファンダメンタルズに関する情報を持つ投資家(情報トレーダー)は、自らの情報に基づいて取引を行い、利潤を獲得しようとする。一方で、そのような情報を持たない投資家(非情報トレーダー)は、情報トレーダーの取引による価格変化からファンダメンタルズを予測することで、利潤を獲得しようとする。Grossman and Stiglitz(1980)によれば、情報トレーダーの数が多く、市場価格にノイズが少ない情報効率的な市場ほど、情報トレーダーの取引が非情報トレーダーの取引を誘発し、取引が市場価格に与える影響は大きくなる。そのため、情報効率的な市場では、「デプス」の観点から、市場の流動性が低下する可能性が考えられる。

  • 市場の流動性の測定
市場の流動性という概念は多面的であるため、1つの尺度で測定することは難しい。そのため、様々な流動性の測定尺度が考案されている。例えば、日次リターンの絶対値をその日の取引金額で割ったAmihudの流動性指標があげられる。この指標は、取引が市場価格にどれだけの影響を与えたかを示しているといえる。他にも、価格を1単位変化させるのに必要な注文量を測定する指標として、Kyleのλ(カイルのラムダ)がある。この指標は、市場価格に影響を与えることなく取引できる証券の取引量を表し、「デプス」に関わる流動性の指標であるといえる。以下の表に流動性指標の例を示す。
 
【表】
市場の流動性
 
 
 

(参考文献)
Kyle, A. S. (1985). Continuous auctions and insider trading. Econometrica: Journal of the Econometric Society, 1315-1335.
Grossman, S. J., & Stiglitz, J. E. (1980). On the impossibility of informationally efficient markets. The American economic review, 70(3), 393-408.

あわせて閲覧されているワード