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  • 公開日時 : 2020/09/30 10:29
  • 更新日時 : 2024/02/14 14:43
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フロー・アプローチ

フロー・アプローチ
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フロー・アプローチとは、為替相場決定理論の1つで、ある一定期間における外国通貨のフローに対する需給関係から、為替相場が決定されるとする考え方である。外国通貨のフローに対する需給は、経常収支外貨準備増減を除く金融収支、及び、公的介入に伴う外貨準備増減によって生じる。
 
経常収支は、自国通貨建て為替相場Eが減価すると輸出が増大し、輸入が減少するため、Eの増加関数、自国所得Yが増大すると輸入が増大するため、Yの減少関数、一方、外国所得Y*が増大すると輸出が増大するため、Y*の増加関数と考えられる。公的介入に伴う外貨準備増減を除く金融収支は、直接投資収支証券投資収支、金融派生商品収支、その他投資収支から構成され、これらに基づく資本流入は自国の名目金利をi、外国の名目金利をi*としたとき、内外金利差i-i*が拡大すると増大すると考えられるので、i-i*の減少関数と考えられる。なお、フロー・アプローチにおいては、為替相場減価率は重視されていなかった。また、公的介入は、外貨準備の増減として測られる。このとき、国際収支の恒等式より、
 
           経常収支(E,Y,Y*)-外貨準備増減を除く金融収支(i-i*)-外貨準備増減=0
(+,-,+)                                        (-)
 
が成立する。但し、(E, Y, Y*)、(i-i*)は括弧内の変数に依存する関数であることを表し、また、「+」は増加関数、「-」は減少関数であることを表す。
 
上式において、内外金利差 i-i*は、内外通貨当局の金融政策によって決定されるため、外貨準備増減を除く金融収支は外生的と考えられる。また、公的介入に伴う外貨準備増減も内外通貨当局の介入政策によって決定されるため外生的と考えられる。このとき、経常収支は、金融収支に等しくなるよう一意に決定され、為替相場Eは、この経常収支を維持する水準に調整される。
 
フロー・アプローチは、国際資本移動が限定的であった1980年代初頭までは、為替相場決定理論として意味を持っていた。しかし、近年では、外国為替取引の大部分は、経常取引を裏付けとして持つ実需取引ではなく、資本取引から派生しているため、為替相場決定理論としての有効性は失われている。なお、経常収支(貿易収支)の決定理論の文脈からはアブソープション・アプローチと呼ばれるものに相当する。
 

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