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  • 公開日時 : 2018/02/04 01:21
  • 更新日時 : 2018/03/13 22:10
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ペイアウト政策

ペイアウト政策
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回答

ペイアウト政策(Payout Policy)とは、株主還元について企業が採用する方針のことである。具体的に、ペイアウト政策は、配当を通じた株主還元に関する方針である配当政策と、既存株主からの発行済み株式の買い取りを行う自社株買いの2つにわけられる。株主に対して自社の製品などを提供する株主優待が日本において多く行われており、株主優待もまたペイアウト政策の1つであると考えられる。

配当、または自社株買いに関する政策決定は、内部留保の水準を決める側面を持つ。企業に蓄積された内部留保は、投資などに用いられるが、内部留保の資金だけでは投資を行えない場合、外部資金を用いる必要がある。以上から、ペイアウト政策は投資決定とも関係する企業にとって重要な意思決定の1つである。
 
 
さらに詳しく

 
 
【ポイント】
 

  • 完全資本市場の下でのペイアウト政策と企業価値の関係
1961年にMillerとModilianiによって示された配当政策に関する命題がMM配当政策無関連性命題であり、「完全資本市場の仮定の下では、企業のペイアウト政策は企業価値に影響を与えない」ことを示した。

この命題では、企業のペイアウト政策に着目するために企業の投資政策と純利益は一定と仮定し、また、簡略化のために企業は株式からのみ資金調達を行うと仮定する。このとき、企業が増配する場合には、その分の資金だけ投資に回す資金が足りなくなるため、増資による外部資金調達を行う必要がある。これにより、既存株主の株主価値は、配当落ち後の株価(配当の支払いで低下した株価)×当該株主が保有する総株式数となり、新規株主の株主価値は配当支払い相当額に等しい。既存株主と新規株主の株主価値の合計が企業価値であるが、既存株主から新規株主へと価値の移転が行われるだけであり、企業価値自体は変化しない。これがMM配当政策無関連性命題の主張である。

この結論は、企業が自社株買いを行った場合も同様である。企業が今期に配当を行わずに内部留保を増加させるのであれば、企業の投資を一定であると仮定しているため、自社株買いによって内部留保を減少させる必要がある。
 

  • 情報の非対称性が存在する場合のペイアウト政策の影響
MM配当政策無関連命題では完全資本市場を仮定していた。しかし、情報の非対称性が存在する場合、ペイアウト政策の違いは市場に様々な情報を伝達し、企業価値に影響を与える可能性がある。実際、企業の情報を株主よりも経営者の方が知っていると考えられる。このとき、企業の将来業績に関する情報を十分知らない株主が、増配や自社株買いを経営者の将来業績に対する自信の表明であると解釈すると、株価が上昇すると考えられる。これは、シグナリング仮説と呼ばれる。

また、ペイアウト政策の違いは、経営者の将来業績に関する情報以外にも、当該企業が成長企業であるか成熟企業であるかの情報を市場に伝達する可能性がある。一般的に、成長企業は、自社が有する全ての有益な投資機会への投資が可能なほどの(事業によって生み出された)キャッシュフローを有していない。そのため、配当は低配当となったり、あるいは自社株買いを控えたりする傾向がある。一方、成熟企業は、事業から生み出されるキャッシュフローの全てを再投資するほどの有益な投資機会を持たないと考えられる。そのため、配当は高配当となったり、あるいは自社株買いを実施したりする傾向がある。これは、ライフサイクル仮説と呼ばれる。

コーポレート・ガバナンスの観点では、ペイアウト政策は情報の非対称性に起因する株主と経営者の間の利害対立を緩和させる効果も期待される。企業にフリーキャッシュフローが蓄積している場合、企業規模の拡大のインセンティブを持つ経営者はフリーキャッシュフローを用いて過大投資を行う懸念がある。この場合、経営者がフリーキャッシュフローを用いて配当または自社株買いを行うことにより、株主と経営者の利害対立を緩和する効果が期待される。
 

  • 日本におけるペイアウト政策
日本では、従来、ペイアウト政策の1つである自社株買いは原則禁止とされていた。1994年に一部解禁されたものの、自社株買いは特定の目的のためにしか行うことができず、また金庫株の保有も許されていなかった。2001年の商法改正により、自社株買いの目的に関する制約がなくなり、また金庫株の保有が解禁された。これは、企業にとってペイアウト政策における選択肢が広がったことを意味している。日本企業において配当と自社株買いは、2008年から2009年にかけて一時落ち込んだものの、2000年初めより総じて上昇傾向にある。

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