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  • 公開日時 : 2021/12/01 17:03
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最適通貨圏の理論

最適通貨圏の理論
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回答

最適通貨圏の理論(Theory of Optimum Currency Areas)とは、複数の国家間で単一の共通通貨を導入する通貨統合を行う際、その最適な地域的範囲を決定する基準に関する理論である。
 
単一の共通通貨を導入した場合には、国家間の経済的格差を為替レートの変動によって調整することができなくなるため、他の手段によって調整しなければならない。したがって、最適通貨圏の理論においては、為替レート以外の調整手段をもつ地域であるかどうかが着目される。具体的には、以下の4つの代表的な基準がある。
 
第1にショックの対称性である。これは、共通通貨圏内において共通のショックが発生し、各国経済が同じように反応する限りにおいては、そもそも経済的格差が生じないため、調整の必要がないことを意味する。
 
第2に貿易面における経済の開放度である。例えば、共通通貨圏内において、非対称的な需要ショックが発生し、ある国では需要が増加し、労働需要が増加する一方、他の国では需要が減少し、労働需要が減少したとする。このとき、貿易面において経済が開放されると、国家間の輸出入によって非対称的な需要ショックを吸収できる。
 
第3に労働の移動性である。例えば、第2の基準と同様、共通通貨圏内において、非対称的な需要ショックが発生し、ある国では需要が増加し、労働需要が増加する一方、他の国では、需要が減少し、労働需要が減少したため失業が発生したとする。このとき、国家間で労働移動が自由であれば、労働需要が減少した国から増加した国へ労働者が移動することによって国家間の雇用の不均衡を調整できる。
 
第4に財政移転である。例えば、共通通貨圏内のある国で不況が発生する一方、他の国で好況になったとする。このとき、財政移転が可能であれば、好況の国から税金を徴収して、不況の国に補助金として支払い、これをその国で財政支出として用いるならば、国家間の経済的格差の調整が可能となる。