国際通貨制度(International Currency System)とは、外国為替相場、
外国為替取引、
国際収支などの調整に関する国際的な法制度、慣行を意味する。
第2次大戦後、国際通貨制度の安定化において
IMF(国際通貨基金)が主導的な役割を果たし、各国の為替相場や為替政策を監視するとともに、国際収支危機に陥った国に対し、金融支援を行ってきた。また、近年では、IMFの融資制度の拡充・整備が進むとともに、IMFによる金融支援を量的・質的に補完するため、地域金融協力を促進する動きが見られる。
第2次世界大戦後の国際通貨制度である
ブレトン・ウッズ体制下では、金・ドル本位制度に基づいた
固定為替相場制度が採用されていたが、1970年代以降、多くの先進諸国は
変動為替相場制度に移行した。また、1990年代に頻発した
通貨危機を経て、変動為替相場制度を採用する新興市場国も増加してきている。また、欧州では、単一通貨ユーロが導入されている。
さらに詳しく
【ポイント】
1944年のブレトン・ウッズ会議において、第2次世界大戦後の国際通貨制度についての協議が行われ、アメリカがドルを金に固定させると同時に、アメリカ以外の国は自国通貨をドルに固定させる金・ドル本位制度の採用が決定された。
また、為替相場を安定化させることで国際金融秩序を維持することを目的に
IMF(国際通貨基金)の設立が合意され、1947年から業務を開始した。この第2次世界大戦後の国際通貨制度は、ブレトン・ウッズ体制と呼ばれる。
1971年8月の
ニクソン・ショックや12月の
スミソニアン合意を経て、ブレトン・ウッズ体制は崩壊し、1973年以降には、多くの先進国が変動為替相場制度に移行した。このように国際通貨制度が変遷する中、IMFは、為替相場の安定のために各国の為替相場や為替政策を監視するとともに、国際収支危機に陥った国に対して金融支援(融資)を行っている。
その後、変動為替相場制度下で、先進諸国は、為替相場を適正な水準に誘導したり、為替相場を安定化させたりすることを目的に、1985年のプラザ合意、1987年のルーブル合意などの政策協調を行った。また、欧州においては、1979年にターゲット・ゾーン制度に基づいた
欧州通貨制度(EMS)が発足し、1999年には
欧州通貨統合により単一通貨ユーロが導入された。
先進諸国では、変動為替相場制度を採用する国が多かった一方、新興市場国・発展途上国では、依然、実質的には固定為替相場制度を採用する国が多かった。このような中、1990年代に入り、1994年にはメキシコ、1997年には東アジアで
通貨危機が発生した。
IMFはこれらの国への金融支援において主導的な役割を担ったが、IMFによる金融支援は量的に不十分であり、また、
スタンド・バイ取極を通じた融資においては、
コンディショナリティと呼ばれる融資条件が課されるため、支援が行われるまでに時間を要し、これが危機を拡大させる要因となった。
これらを踏まえ、国際収支危機の際には、大量の資金を迅速に融資する必要性が認識され、その後、融資制度の拡充・整備が進むとともに、IMFによる金融支援を量的・質的に補完するため、近年では、地域金融協力を促進する動きが見られる。例えば、
チェンマイ・イニシアティブ(CMI)はその一例である。
また、通貨危機において、固定為替相場制度の脆弱性が認識されたこともあり、近年では、変動為替相場制度を採用する新興市場国も増加してきている。