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  • 公開日時 : 2018/12/26 10:31
  • 更新日時 : 2023/11/28 12:35
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銀行貸付

銀行貸付
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回答

銀行貸付(Bank Lending)とは、金融仲介機関の1つである銀行が、企業や個人などに対して資金を貸し付けることである。
 
銀行貸付の方法は、手形割引、手形貸付、証書貸付、当座貸越の4つに大別される。銀行が借り手のスクリーニングモニタリングを行うことにより、低いコストで資金を貸し付けることが可能となる。
 
 
さらに詳しく

 
 
【ポイント】
  • 銀行貸付の方法
銀行貸付の方法は、手形割引、手形貸付、証書貸付、当座貸越の4つに大別される。手形割引は、銀行が満期前の手形を買い取り、手数料や満期日までの利息相当額を割り引いた額を貸付ける。手形貸付は、約束手形を銀行に差し入れ、額面から利息相当額を差し引いた額を貸し付ける。証書貸付は、「金銭消費貸借契約書」を銀行と取り交わし、その契約にもとづき資金の貸借が行われる。当座貸越は、一定額を限度として、当座預金残高を超える資金を貸し付ける貸付方法である。一般的に、手形割引、手形貸付、当座貸越は、短期資金の貸付で用いられ、証書貸付は長期資金の貸付で用いられる。
 
  • 銀行の情報生産機能
どのような方法で貸付を行おうとも、銀行と企業や個人などの借り手の間に情報の非対称性が存在するため、銀行は、借り手に関する情報を収集・分析する必要がある。これを情報生産機能という。
銀行が情報生産機能を用いて、借り手のスクリーニングとモニタリングを行うことにより、低いコストで資金を貸し付けることが可能となる。
 
銀行が生産する情報は、財務諸表などのハード情報と、経営者の経営能力などのソフト情報に大別できる。ハード情報を用いた貸出形態をトランザクション・バンキング、ソフト情報を用いた貸出形態をリレーションシップ・バンキングという。
 
銀行貸付は、日本において広く用いられており、特に中小企業にとっては、銀行からの借入れは重要な資金調達手段である。中小企業は、大企業と比べて相対的に情報の非対称性が大きいため、長期的かつ多面的な関係構築によって生産されたソフト情報を用いるリレーションシップ・バンキングを行うことで、担保や保証に過度に依存しない貸付が可能になると考えられる。
 
  • 銀行貸付におけるコスト面でのメリット 
資金の貸借契約前の情報の非対称性によって発生する逆選択の問題は、銀行が適切な貸付先であるかをスクリーニングすることで解決可能である。貸借契約後の情報の非対称性に起因するモラルハザードの問題に対しては、貸付先が契約を遵守するように銀行がモニタリングを行うことが期待される。
 
具体的に、個々の投資家もモニタリングを行うことは可能だが、1つの企業に対して複数の投資家がモニタリングを行った場合、モニタリングコストを個々に負担することになってしまうため、コストが重複する無駄が生じる。そこで、投資家が一人の投資家に委託すれば、その委託された代表的投資家(銀行)だけがモニタリングコストを負担すればよく、結果として投資家1人当たりが負担するコストは相対的に安くすることができる。ただし、モニターとなる代表的投資家(銀行)を誰がモニターするのかという新たな問題が生じてしまう。
 
これに対してDiamond(1984)は、モニターとなる投資家(銀行)がリスク分散を図りながら融資を行うことによって銀行に流入するキャッシュフローを安定化させ、これを原資に投資家とは負債契約(すなわち、預金契約)を結ぶことで当該問題を解消できることを理論的に示した。これが委託されたモニターとしての金融仲介機関としての銀行の存在意義となる。
 
なお、貸し手と借り手の間に情報生産の非対称性がない場合であっても、将来発生するあらゆることを想定し、貸借契約に明記することは、一般的に困難である。契約に明記されていない状況が発生した場合には、コストをかけて再交渉する必要があり、再交渉にかかるコストは、企業が各投資家に対して行うよりも、1つの銀行と行うほうが低くなると考えられる。
 
 
 

(参考文献)
Diamond, D. W. (1984) Financial intermediation and delegated monitoring. Review of Economic Studies, 59:393-414.