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  • 公開日時 : 2018/02/04 01:27
  • 更新日時 : 2022/02/21 14:18
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伊藤レポート

伊藤レポート
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伊藤レポート(Ito Review)とは、2014年8月に公表された、伊藤邦雄一橋大学教授(当時)を座長とした、経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書の通称である。

企業が投資家との対話を通じて持続的成長に向けた資金を獲得し、企業価値を高めていくための課題を分析し、提言を行っている。ROEの目標水準を8%と掲げたことで、実務界から大きな反響があった。また、2017年10月にはアップデート版にあたる「伊藤レポート2.0」が公開された。
 
 
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【ポイント】
 

伊藤レポートは、2012年の英国の「ケイ・レビュー(Key Review)」を手本に、企業が投資家との対話を通じて持続的成長に向けた資金を獲得し、企業価値を高めていくための課題を分析し、提言を行っている。

伊藤レポートの問題意識は、日本企業の収益性が長期的に停滞している現状をいかにすれば改善できるかという点である。レポートの中では、これを「持続的成長の促進」という言葉で議論している。

具体的な問題点として、現状の日本の資本市場ではショートターミズム(短期志向)が顕在化しており、持続的成長に必要な長期的なイノベーションに向けた投資が困難になっていると指摘している。そこで、企業による長期的なイノベーションに向けた投資を促すためには、それを支える長期的な資金が必要であると強調している。企業と株主との間の「協創」と表現される、両者の長期的な企業価値創造を指針とした一種の協力関係を構築(エンゲージメント)し、企業による長期的イノベーションを促し、日本の経済成長につなげるべきであると提言している。

  • エンゲージメントとROE8%
伊藤レポートの基本メッセージは、①持続的成長の障害となる慣習やレガシーと決別する、②イノベーション創出と高収益性を同時実現するモデル国家を目指す、③企業と投資家の「協創」による持続的価値創造を目指す、④株主資本コストを上回るROEを目標とする、⑤企業と投資家による「高質の対話」を追及する、⑥全体最適に立ったインベストメント・チェーン変革を目指す、という6つである。

以上の提言は、金融庁が2014年2月に策定・公表した「スチュワードシップ・コード」や、日本証券取引所が2015年6月に公表した「コーポレートガバナンス・コード」と強く関連している。とくに④のROEの具体的なターゲットとして最低限でも8%のROEを上げられるよう要請する提言は、当時のメディアで頻繁に取り上げられた。このROEを重視した提言は、残余利益モデルによって理論的に正当化されるものである。

  • 2017年のアップデート:伊藤レポート2.0
経済産業省は2016年8月から「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」と題した、伊藤邦雄一橋大学特任教授(当時)を座長とした研究会を立ち上げ、伊藤レポート公表後の経済状況をふまえた新たな提言を行った。その最終レポートは「伊藤レポート2.0」と題され、表題から推測されるように伊藤レポートのアップデートとなった。

「伊藤レポート2.0」では、伊藤レポートで示された企業と投資家の「協創」(協調による価値創造)に向けて、より具体的な道筋を検討している。主たる検討課題は、①企業による戦略投資がどのように行われ、それをどのように評価すべきか、②投資家の資動向が現状どのようになっていて、今後いかにすれば中長期的な投資を促せるか、の2点である。

前者については、日本企業の研究開発投資のパフォーマンスが諸外国に比べて悪く、人的投資が1990年代から大幅に低下しており諸外国に水をあけられている点を指摘している。さらに、経営者が短期的な志向で研究開発投資を行っていることも報告している。そして、企業が競争優位を確保するために戦略的な投資が必要であること、上場企業が長期の成長資金を確保するために戦略的な投資に対する株主からの信頼を得る必要があること、などを説いている。

後者については、近年インデックス投資に代表されるパッシブ運用が急増し、日本市場においても大きな存在感を占めている点を確認するとともに、企業のファンダメンタルに着目した投資が減少し、市場の価格形成機能を弱めるのではないかという懸念を示している。そして、パッシブ運用を中心とする機関投資家は、個別企業の株式を機動的に売却する選択肢が限られていることから、企業との対話・エンゲージメントを通じて、長期のリスク要因であるESGなどの情報を把握し、議決権行使などを通じて改善を促すことで、スチュワードシップ責任を果たし、市場からの規律付けを行うことの重要性を説いている。

以上のような現状分析を通じて、投資家と経営者との間のコミュニケーションにおけるベストプラクティスを示すようなガイダンスを策定することを提言している。
 

 

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