ROE(Return on Equity、株主資本利益率)とは、元手となる
株主資本に対して企業の利益がどれだけ効率的に利用されたのかを測るために、企業利益を期首の株主資本
(注)で割って算出される収益性の指標である。
【図】貸借対照表と損益計算書から見たROE
さらに詳しく
【ポイント】
ROEは、元手となる株主資本に対して企業の利益がどれだけ効率的に利用されたのかを測る指標である。元手としての株主資本は、期首の株主資本である。一方で、株主資本の増加額は、損益計算書に表示される親会社株主に帰属する当期純利益が対応する。すなわちROEとは「企業が株主に帰属する持分をどれだけ増やしているのか」を示す指標であるといえる。
非支配株主に帰属する持分も考慮する場合には、分母に
純資産を分子に
包括利益を置けばよい。ただし、以上の議論は日本の会計基準に限った議論であり、
IFRSや米国基準を用いている企業についてはそれぞれに対応しなければならない。
ROEは
デュポン公式と呼ばれる分解公式によって、収益性と資本構成の2つの要因に、または収益性と資産の効率性と財政状態の3つの要因に分解することができる。2つの指標に分解する場合には、
ROAと
財務レバレッジに分解される。また3つに分解する場合には、
売上高利益率、
総資産回転率、
財務レバレッジの3つの指標に分解される。これらの分解によって、ROEの水準や変化が、企業の収益性及び効率性と財政状態のどの要因によって決定しているかを簡便に分析することができる。
例えば、
自社株買いによってROEを改善させる場合、取得した自己株式を消却すると株主資本が減少するため、当期純利益を一定とすればROEを改善することができる。しかし、自社株買いによるROEの改善は、財務レバレッジを増加させることによるものであり、利益性や資産回転率といった企業の効率性を改善していることを意味しない。このように、単にROEによって投資判断を行うことには注意が必要であるといえる。ほかに、伊藤レポートでは、このデュポン公式によって、日本企業のROEが低水準である原因を低いROA、すなわち収益性にあると指摘している。
株主が企業に対して要求する利益率は、株主資本コストとして算定される。そのため、ROEと株主資本コストの差異は、「企業が株主の要求や期待以上に株主資本に対して稼いだ利益率」である。
この差異は株主資本に対する残余利益の比率を示しており、
残余利益モデルから、この現在価値が正であれば
PBRが1より大きくなることがわかる。これが伊藤レポートが、ROEを業績指標として重視する理論的根拠となっている。
(注)実務的には、期首・期末の平均値を分母とすることもある。