負債の節税効果とは、債権者に支払う利払いが法人税の対象とはならないことから、負債による資金調達(
デット・ファイナンス)によって、節税の分だけ企業価値が増大する効果をいう。負債の利用によって生じる節税効果は、企業の法人税率が高い及び債務残高が多いほど大きくなる。
一般に、負債の節税効果は、下記式で表される。
【式】
例えば、下記表の通り、事業内容が全く同一であるが、負債利用のないU企業と、負債の利用のあるL企業で、企業価値に差が生じる例を考える。
まず、事業内容は同じなので、営業利益を両企業とも同一の50とする((1)行)。U企業は負債の利払いがないのに対して、L企業は負債の利払いが20あるとする((2)行)。営業利益から負債の利払いを引くと、税引前利益が求められ、U企業は50であるのに対して、L企業は30となる((3)行)。この税引前利益に一定の法人税がかかるため、法人税の支払い額に違いが生じている。
この法人税を、税引前利益から控除したものが税引後利益となる((5)行)。U企業には債権者は存在せず
株主しかいないため、税引き後利益が株主の利得35になる一方で、L企業は債権者と株主が資金提供を行っているので、両者の利得の合計41が資金提供者の利得となる((6)行)。これにより、U企業とL企業の利得の差は、企業からの法人税の支払い額の差から生じていることがわかる。
【表】負債の節税効果の具体例