第1世代モデル(First Generation Model)とは、
通貨危機の発生に関する理論の代表的な3種類のモデルのうち、マクロ経済状況の悪化が原因で発生する通貨危機を説明するモデルである。1960年代や1970年代にチリやペルーといった南米の国々で発生した通貨危機をきっかけに、Krugman(1979)やFlood and Garber(1984)によって提唱された。
第1世代モデルでは、マクロ経済状況の悪化した国が、たとえば政府の財政赤字を通貨当局の貨幣発行によって補う場合、どの時点で通貨危機が生じるかを分析している。1994年の
メキシコ通貨危機及び1998年のロシア通貨危機では、危機発生前にファンダメンタルズの悪化が見られ、第1世代モデルの例として挙げられる。
なお、通貨危機の発生に関する代表的なモデルとしては、第1世代モデル、
第2世代モデル、
第3世代モデルの3種類が挙げられる。第1世代モデルがマクロ経済状況の悪化と通貨危機の関係を説明しているのに対し、第2世代モデルは、財政赤字等のマクロ経済状況の悪化を必ずしも伴わない状況で、投資家の期待(予想)に基づく行動によって通貨危機が発生するメカニズムを説明している。さらに第3世代モデルは、国内銀行部門の脆弱性による金融危機と通貨危機が併発するメカニズムを説明しており、企業部門と銀行部門の関係性が強いアジアにおける通貨危機を説明するモデルとして用いられる。
(参考文献)
橋本優子・小川英治・熊本方雄,『国際金融論をつかむ』,有斐閣,2007年