第2世代モデル(Second Generation Model)とは、
通貨危機の発生に関する理論の代表的な3種類のモデルのうち、投資家の期待(予想)に基づく行動によって引き起こされる通貨危機を説明するモデルである。Obstfeld(1996)によって精緻化された。
第2世代モデルは、財政赤字等のマクロ経済状況の悪化を必ずしも伴わない状況で、投資家による
投機攻撃と通貨当局による防衛のなかで、投資家の自己実現的期待によって通貨危機が発生するメカニズムを説明している。通常、第2世代モデルでは、投資家の
固定為替相場制度の維持に関する期待に依存して、通貨危機が発生する場合と発生しない場合の複数均衡が存在する。投資家が、投機攻撃を行っても通貨当局によって防衛され固定為替相場制度が維持されると予想すれば、実際に投資家は投機攻撃を実施せず危機は発生しない。一方で、投資家による投機攻撃を防衛不可能であると投資家が予想すれば、実際に投機攻撃が行われ、固定為替相場制度維持は困難になる。
第1世代モデルはマクロ経済状況の悪化と通貨危機の関係を説明しているが、1992年の欧州通貨危機などファンダメンタルズの悪化があまり観察されない通貨危機も発生した。第2世代モデルでは、投資家の期待が自己実現する形での通貨危機の発生が説明されるが、1997年のアジア通貨危機をきっかけに、銀行部門の脆弱性による金融危機と通貨危機が併発するメカニズムの説明として、
第3世代モデルが提唱された。
(参考文献)
橋本優子・小川英治・熊本方雄,『国際金融論をつかむ』,有斐閣,2007年