ノミナル・アンカー(Nominal Anchor)とは、物価水準(または、インフレ率)を安定化させるため、特定の指標に
金融政策をリンクさせることで、金融政策当局の裁量の余地を小さくする政策を意味する。特定の指標であるターゲットに錨(アンカー)を下ろすことで、船に見立てられた物価水準を安定化させることを意味するため、このように呼ばれる。
具体的には、以下の3つの代表的な方法がある。
第1に、為替レートをターゲットとし、
固定為替相場制度を採用することである。購買力平価に基づけば、為替相場変化率は、自国と外国のインフレ率格差に等しくなる。このとき、インフレ率が安定している国に対し、固定為替相場制度を採用すれば、為替相場変化率はゼロであるため、自国のインフレ率は通貨を固定した相手国のインフレ率に等しくなり、自国のインフレ率も安定する。
第2に、
マネーストックの変化率をターゲットとし、マネーストックの変化率を一定に維持する政策(通常、k%ルールと呼ばれる)を採用することである。貨幣数量説に基づけば、インフレ率はマネーストックの成長率と実質経済成長率の差に等しくなる。実質経済成長率が安定している場合には、マネーストックの成長率を一定とすることで、インフレ率を安定化させることができる。
第3に、名目金利をターゲットとし、名目金利を安定化させる政策を採用することである。フィッシャー方程式に基づけば、期待インフレ率は名目金利と実質金利の差に等しくなる。このとき、実質
金利平価が成立しているならば、自国と外国の実質金利は等しくなる。外国の実質金利が安定して場合には、名目金利を安定化させることで、期待インフレ率を安定化させることができる。