流動性の罠とは、金利が一定水準以下に低下した状態において、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となるため、金融緩和により貨幣供給を増大させても、旺盛な貨幣需要にすべて吸収され、
金融政策が効果を持たなくなる状況を意味する。
通常、金利が低下し、債券価格が上昇すると、多くの経済主体は将来、債券価格が低下することを予想するため、将来の債券購入に備え、現在では、資産を
貨幣として保有しようとする。これを投機的動機に基づく貨幣需要と呼ぶ。
下記の左図で示される通り、投機的動機に基づく貨幣需要は金利の減少関数となる。このとき、金融緩和により貨幣供給を増大させると(垂直の貨幣供給曲線が右方シフトすると)金利が低下し、これが、消費や投資を刺激する。しかし、金利が一定水準以下に低下すると、貨幣を保有する機会費用が十分に小さくなるため、貨幣と債券の代替性が高まり、金利がわずかに低下しようとしても貨幣需要が無限に増大する。これを貨幣需要の金利弾力性が無限大になると表現する。このとき、右図で示された通り、貨幣需要関数に水平の部分が現れ、金融緩和により貨幣供給を増大させたとしても金利は低下せず、消費や投資を刺激する効果を持たない。
【図】