株式所有構造(Ownership Structure)とは、その企業の株式を誰がどのように保有しているのかを示すものであり、株主集中度と株主構成が注目されることが多い。株主集中度は個々の
株主の所有割合や所有株式数から株式所有構造を示すものであり、株主構成は株主の属性に注目し、株主構成を所有主体別に分類して区別したうえで、株式所有構造を示すものである。例えば、株主を所有主体で分類すると、
機関投資家、
外国人投資家、
年金基金、
個人投資家と
同族企業などに分けられる。
株式所有構造は企業の経営、収益性に影響を与え得るため、コーポレートガバナンス理論上で重要な考察対象とされている。学術研究においても、企業の株主構成が企業の株価や収益性に対して影響を与え得ることが示されている。
さらに詳しく
【ポイント】
議決権が付与されている株式を保有する株主は、企業の所有者であり、企業の経営方針や経営者の選任・解任に影響を持つ。ただし、会社法では議決権保有割合によって、株主が行使できる権利や権限は異なっている。例えば、3分の2以上の議決権を有する株主は
M&Aや新株発行などの重要な事項を決めることができ、半数超の議決権を持つ株主は
取締役や会計監査役の選任・解任、余剰金の分配や計算書類の承認などを決議することができる。このように、株主の所有割合もしくは所有株式数は当該株主が企業に与えられる影響の大きさを左右する。
株式会社は多数の小口の所有権に細分化して株式を発行している。その結果として、大企業では、保有目的など考え方の異なる多くの株主が存在し、効率的な経営が難しくなる傾向にある。そこで、株式会社の多くは、代理人に経営を委託して経営の効率化を図るとともに、株主によるチェック機能を働かせ、経営の健全性を構造的に保っている。これを所有と経営の分離と言う。
所有と経営が分離している株式会社において、一部の株主が持つ経営に関する決定権と彼らのキャッシュ・フローの分配権は乖離している現象がみられる。この現象が生じる理由は下記図で示されている企業グループを見ればわかる。図の企業グループでは、企業Aは企業Bの55%の株式を持っているので、企業Bの親会社であり、企業Bの経営活動に関する決定権を持っている。それと同時に、企業Aは株主Aによって支配されているので、企業Bの実質的な支配者は企業Aではなく、企業Aの
支配株主である株主Aである。このため、株主Aは企業Bに対して55%の議決権を持っている一方で、キャッシュ・フローの分配権は33%(=60%×55%)となる。
このように経営に関する決定権とキャッシュ・フローの分配権が分離している企業においては、経営に関する決定権のない非支配株主の利益が適切に保護されない事態が生じる可能性がある。図の例でいえば、株主Aが企業Bの経営方針を誤って、損失を発生させた場合、非支配株主である株主Bと株主Cは株主Aの過失で損失を被ることとなる。
【図】企業の所有構造の一例