国際収支の弾力性アプローチ(Elasticities Approach to the Balance of Payments)とは、為替相場と
貿易収支の関係を考察するためのアプローチの1つであり、為替相場の変化が貿易収支を変化させるという考え方に基づいたものである。
国民所得勘定の関係式に基づけば、下記式が成立する。
貿易収支(輸出-輸入)= GDP -(消費+投資+政府支出)
このとき、弾力性アプローチは、上式の左辺に焦点を当て、為替相場が変化すると輸出・輸入が変化するため、その結果、貿易収支が変化するという考え方に基づいている。
例えば、為替相場が自国通貨安・外国通貨高になると、輸出量が増大し、輸入量が減少する一方、輸入財価格は上昇する。このとき、貿易収支が改善するためには、輸出量の増大効果と輸入量の減少効果が、輸入財価格の上昇効果を上回る必要がある。このための条件を
マーシャル=ラーナー条件と呼ぶ。
このとき、貿易収支が改善し、上式の左辺が増大するならば、右辺も増大する必要がある。これは、為替相場が自国通貨安・外国通貨高になったとき、輸出量の増大により総需要が増大するため、有効需要原理が働き、GDPが増大することによって達成される。したがって、弾力性アプローチは、有効需要原理が作用する短期的な分析のためのアプローチと考えられる。