国際収支のアブソープション・アプローチ(Absorption Approach to the Balance of Payments)とは、為替相場と
貿易収支の関係を考察するためのアプローチの1つであり、国内の貯蓄-投資バランスから貿易収支が決定し、為替相場はその貿易収支の値を維持するために内生的に決定されるという考え方に基づいたものである。
国民所得勘定の関係式に基づけば、式1が成立する。
【式1】
貿易収支(輸出-輸入)= GDP -(消費+投資+政府支出)
アブソープション・アプローチは、上式の右辺に焦点を当てた考え方であり、「消費+投資+政府支出」をアブソープションと呼ぶため、このように呼ばれる。
ここで、式1は、「GDP=消費+租税+貯蓄」という関係式を使えば、式2で表すことができる。
【式2】
貿易収支(輸出-輸入)= 貯蓄-投資+財政収支(租税-政府支出)
このとき、アブソープション・アプローチでは、まず、貯蓄は家計の
効用最大化行動から決定され、投資は企業の利潤最大化行動から決定されると考える。このとき、貯蓄と投資は世界の実質金利に依存して決定されることになる。また、財政収支は、政策当局が外生的に決定すると仮定する。
したがって、貿易収支は、貯蓄と投資の差として決定されることとなり、為替相場は、この貿易収支を維持するように内生的に決定されると考える。したがって、アブソープション・アプローチに基づけば、為替相場は貿易収支の大きさを決定する力を持たないことになる。