物価指数の測定誤差とは、
消費者物価指数などに基づきインフレ率を算出する際、実際のインフレ率よりも上方バイアスをもって算出されやすいことを意味する。
消費者物価指数は、
ラスパイレス指数として計算されるため、財・サービスのウェートが基準時のバスケットで固定される。このため、ある財・サービスの相対価格が上昇により当該品目の購入数量が減少し、実際のウェートは低下したとしても、基準時のウェートで固定されるため、物価指数に上方バイアスが生じる。また、物価指数は品質を一定に保った場合の価格変化を測定するものなので、名目価格が不変でも、品質が上昇すれば、価格は品質向上分低下したと処理される。しかし、品質調整が不足すると、物価指数に上方バイアスが生じる。
このことから、中央銀行が目標インフレ率を設定する際、消費者物価指数などで測られたインフレ率を0%より若干高めに設定し、金融政策運営を行うならば、実際のインフレ率は0%に近く誘導できると考えられる。
金融政策の主たる目的が物価安定であるならば、インフレ率の目標水準を0%とすることが望ましいように思われるが、実際には、1~3%程度の緩やかなインフレ率が目標水準とされる場合が多い。その理由は、「物価指数の測定誤差」による上方バイアスの存在や、「
デフレ時代の糊代」に基づいていると考えられる。
(参考文献)
白川方明(2008)『現代の金融政策 理論と実務』日本経済新聞出版社