サンクトペテルブルクの逆説(Sankt Petersburg Paradox)とは、不確実性下の意思決定における逆説の1つである。この逆説を説明する理論として、
期待効用理論が挙げられる。
例えば、次のようなコイン投げの賭けを考える。まずコインを1回投げ、表が出た場合には2円がもらえ、裏が出た場合にはもう一度コインを投げる。2回目のコイン投げで表が出た場合には4円がもらえ、裏が出た場合には、さらにもう一度コインを投げる。裏が出続ける限りコイン投げは続き、N回目のコイン投げで表が出た場合には2N円がもらえる。このようなコイン投げの賭けから得られる期待金額を計算すると、下記式になる。
期待金額=2×1/2+22×(1/2)2+⋯+2N×(1/2)N+⋯=1+1+⋯+1+⋯=∞
このように、コイン投げの賭けの期待金額が無限大になるにもかかわらず、多くの人々はこの賭けに参加するために多額の金額を支払おうとはしない。これがサンクトペテルブルクの逆説と呼ばれる現象である。
上記の例からも分かるように、人々は不確実性下において意思決定をする場合、単に期待値だけを基準に選択・行動するわけではないと考えられる。これに対する1つの説明として挙げられるのが、期待効用理論である。期待効用理論では、人々は賭けの結果から得られる期待金額ではなく、
効用の期待値をもとに意思決定を行うと考える。