アジア通貨危機の特徴は、通貨危機と金融危機が併せて発生した点である。財政赤字やインフレなどの問題が小さい周辺国へも通貨危機が金融危機を伴って広がった。自国通貨の価値を事実上ドルに固定していた多くの周辺国において、通貨価値が大幅に下落し、
変動為替相場制度への移行を余儀なくされた。さらに通貨危機が金融危機を誘発し、金融危機によって通貨危機が一層深刻化する状況に陥った。特にタイ、韓国、インドネシアでは、通貨危機と金融危機が深刻化し、
IMFによる支援を受けた。
アジア通貨危機の原因の1つとして、アジア新興市場国の企業は、資金調達における銀行依存度が高く、設備投資を行う際、国内金融機関から現地通貨建てで長期的資金を調達する一方、国内金融機関は、海外から外国通貨建てで短期的資金を調達していたという「期間と通貨のダブル・ミスマッチ」が指摘されている。
また、アジア通貨危機以降、アジア新興市場国では、高い経済成長により国内貯蓄が増大しているが、資本市場が未発達であるため、域内の貯蓄が域内の投資に直接回らず、欧米諸国などの域外を経由し、巨額なグローバルマネーとして域内に還流するという問題がある。
以上のような問題意識を背景として、アジア通貨危機以降、アジア諸国の政府及び中央銀行は、自国通貨建て債券市場の育成などに向けて、域内のクロスボーダー債券取引に係る市場慣行の標準化や規制の調和化に取り組んでいる。